第7章 現代的課題への対応
7-1 気候変動と山岳経済の構造変化
AFRATが今日最も注力している課題は、気候変動がフランス山岳地域の経済・雇用構造に与える影響への対応である。積雪量の減少による冬季観光シーズンの短縮、豪雨・地滑り等の自然災害リスクの増大、高山植生の変化は、スキーリゾートに依存してきた多くの山岳コミュニティの経済基盤を根底から揺るがしている。
AFRATはこれを「危機」ではなく「移行(transition)」として捉え直し、新しい山岳経済モデルの構築に向けた研修・支援プログラムを精力的に開発している。「山岳コンピテンシー・パスポート」「TEAMMプロジェクト」「TIMTプロジェクト」「ProAlp」「Innov Mountain Skills」は、すべてこの文脈で開発された現代的なプログラムである。
7-2 デジタル技術の統合
2026年初頭に開始した「Innov Mountain Skills(IMS)」プロジェクトは、山岳職業の研修にAI(人工知能)やノーコードツールを統合することを目的としている。イタリアのFormont機関との越境連携のもと、Erasmus+の支援を受けて実施されるこのプロジェクトは、農村・山岳地域のデジタルデバイドに橋を架ける新たな挑戦である。
7-3 食の持続可能性
「テロワール料理人」資格プログラムのリニューアルは、AFRATの食・農業・観光を統合した視野の広さを示している。農業の生態系転換(agro-ecologie)、フードロス削減、地場食材の価値化、植物性食事への対応という現代の食の課題が、調理技術習得と不可分に組み込まれた設計は、農村の食産業全体の持続可能性向上に資するものである。
7-4 国際的なネットワーク展開
地中海圏のMed Trails Networkへの創設メンバーとしての参画は、AFRATが「ローカルで実践し、グローバルで連携する(think locally, act globally and locally)」という新たな段階に入ったことを示している。チュニジア・トルコ・ギリシャ・ヨルダン・レバノン等の農村コミュニティに対して、フランス山岳農村で培ったノウハウを展開しながら、逆に他国の事例からも学ぶ双方向的な知識交流が進んでいる。
